現代福祉学科 研究紹介
桐野 匡史(きりの まさふみ)
【こんな研究をしています】
主にケアラー支援に関する研究に取り組んでいます。ケアラーとは、病気や障がいのある家族や近親者を無償で看護・介護(ケア)する人のことをいいます。最近では、18歳未満の子どもが介護等の役割を担う「ヤングケアラー」、子育てと介護等を同時に担う「ダブルケアラー」、働きながら介護等の役割を担う「ワーキング(ビジネス)・ケアラー」、夫や息子が介護者となる「男性ケアラー」など、年齢や性別にかかわらず、誰もがどこかで「ケアラー」について真剣に考える、そのような時代がきています。
その一方で、「ケアラー」のなかにはさまざまな悩みや困難を抱えながら生活している人も少なくありません。ケアラーはときに「隠れた患者」と呼ばれることがあります。それは、ケアを必要としている人だけでなく、そのケアを担うケアラー本人も何らかの支援を必要としているのに、その存在に気づかれにくいためです。ケアラーの多くはケアを必要としている人の「家族」です。そのケアラーが倒れてしまうと、ケアを必要としている人も共倒れしてしまうかもしれません。その意味では、ケアを必要としている人だけでなく、そのケアを担う人たち(ケアラー)の生活や権利を保障していくことも大切な視点のひとつになるといえます。
現在は、主に「ワーキング(ビジネス)・ケアラー」に焦点をあてた研究に取り組んでいます。その目標はケアする人もケアされる人もともに尊重される社会を実現することにあります。
【キーワード】
ケアラー、介護者、仕事と介護の両立、ソーシャル・サポート
【受験生・在学生にひとこと】
多様性が尊重される時代に生きるからこそ、私たちはさまざまな状況に置かれた人たちに関心を向けることが大切になります。かつて、家族のケア(介護や育児、療養など)は「あたり前」のように女性の役割とされてきました。その「あたり前」の感覚は、固定的な価値観や先入観と結びつきやすく、人の感覚を曇らせてしまいがちです。「隠れた患者」が生まれた背景には、こうした「あたり前」の感覚が少なからずあったのかもしれません。そのように考えると、「多様性の尊重」もまた、それが「あたり前」になると、私たちはそのことに対して「無関心」になってしまうかもしれません。だからこそ、私たちは社会のなかに生きる人たちに関心を向けながら、真に助けを求める人たちの存在に気づくことが大切になるのだと思います。