栄養管理学研究室
教員紹介
氏名・職位 首藤 恵泉 SHUTO, Emi 准教授
【専門分野】
臨床栄養学
【所属学会など】
日本病態栄養学会、日本栄養・食糧学会、日本栄養改善学会など
主な研究テーマ
〈栄養素および食品機能成分を活用した栄養管理法の開発〉
- 癌幹細胞を抑制する食品機能成分の探索
- 癌幹細胞における大豆イソフラボンの作用機序の解明
- 癌における治療・栄養管理の開発
- 肥満・メタボリックシンドロームの発症機序の解明と栄養素および食品機能成分の新規作用による治療・栄養管理へのアプローチ
一般の方へ
こんな研究をしています
わが国における死因の第一は、男女ともに癌であることが報告されています。2020年は約38万人の方が癌によって亡くなっており、その割合は死亡者全体の約3割を占めます。
癌の治療は、手術、放射線治療、抗癌剤治療などを併用して行われます。最近では、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害剤など、新しい治療法が次々と開発されていますが、中でも抗がん剤治療は副作用が非常に強く、心身共に著しくQOL(生活の質)を損なうことが大きな問題となっています。
近年、ヒトにおける臨床試験ですでに安全性が確立されている抗癌剤以外の薬剤から、癌に効果的な薬剤を探す研究が行われています。実際に、メトフォルミンという糖尿病治療薬はその効果が注目されています。これらの薬剤を用いて副作用が少なくかつ効果的な癌治療を行うことができるのではないかと期待されています。
わたしたちの研究は、癌の治療に効果を発揮する栄養素や食品機能成分を探すことを目的としています。大豆イソフラボンを中心に、その他の食品機能成分についても効果が見られるものを探索し、それぞれの作用機序を明らかにすることによって、栄養学が癌の治療・栄養管理に役立てることを目指しています。
研究者の方へ
研究の概要
癌に対する研究は、すでに知られている癌遺伝子をターゲットにして、癌が発症しないようにすることに着目されていましたが、近年は、癌遺伝子が作用することによって引き起こされた病態を治療することも重要と考えられるようになりました。
実際の癌治療には、主に外科的手術、放射線治療、抗癌剤治療などが併用して行われます。最近では、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害剤など、新しい治療薬が次々と開発されていますが、ほとんどの場合、治療抵抗性を示し、完治できないことが多いです。治療抵抗性を示す癌細胞は、治療後に臨床画像では見えなくなっても、実際はごくわずかに残っており、またこの細胞は、幹細胞の性質を有することから癌幹細胞として知られるようになりました。癌組織のわずか数%にしか満たないにも関わらず、癌組織の司令塔として細胞内代謝及び免疫系の変化を主導するとともに、強力な治療抵抗性を示し、さらに幹細胞の特性を生かして様々な細胞に分化して癌組織を保護します。このことから、癌幹細胞は、転移・再発の根本であると考えられ、癌幹細胞を制御することが癌治療の戦略において最重要と考えられるようになりました。
近年、ヒトにおける臨床試験ですでに安全性が確立されている様々な疾患の治療薬の中から、癌に効果的な薬剤が探索されおり(ドラッグリポジショニング)、糖尿病治療薬であるメトフォルミンなどその効果が明らかとなっています。これらの薬剤単独または抗癌剤との併用により、副作用が少なくかつ効果的な癌治療を行うことができるのではないかと期待されています。
我々は、栄養素および食品機能成分においても、同様にその可能性を見出しています。大豆イソフラボンを中心に、その他の食品機能成分についても効果が見られるものを探索し、そのメカニズムを明らかにすることによって、栄養学が癌の治療戦略・栄養管理に役立てることを目指しています。