保健福祉学部栄養学科Department of
Nutritional
Science

臨床栄養医学研究室

教員紹介

氏名・職位    入江 康至 IRIE, Yasuyuki 教授


【専門分野】

薬理学、小児科学、臨床栄養学

【所属学会など】

日本薬理学会、日本神経化学会、臨床栄養学会、栄養食糧学会 ほか

主な研究テーマ

〈高齢者、重症心身障害児(者)の腸内環境・腸内細菌叢の解析〉

  1. 高齢者の栄養・腸内環境とフレイルの関係に関する研究
  2. 重度心身障害児・者の腸内環境の研究
  3. サゴ澱粉を主食とするニューギニア島先住民の低蛋白質食適応機構の研究
  4. 習慣的甘酒摂取の腸内環境への影響に関する研究
  5. 新しい動脈硬化促進因子アッセイ系を用いた動脈硬化機構の研究

 

一般の方へ

こんな研究をしています

私たちの研究室では、地元総社産の米麹甘酒を用いた研究で、若年女性あるいは高齢者において、甘酒の摂取により腸内細菌叢の変化と便秘の改善効果を見出しました。便秘は高齢になるほど増加し、80歳以上では男女とも約10人に1人が便秘を訴えていることから、高齢者においては、国民病の一つとして改善に取り組むべき課題のひとつです。実際の在宅高齢者の臨床現場でも、便秘が食欲不振を招き低栄養状態の要因となっているように思われる例もよく経験されます。

わが国では高齢化社会の進行が叫ばれて久しいですが、2018年ついに後期高齢者の人口が前期高齢者を上回り、高齢化は新たな段階に突入しました。厚生労働省が2020年より「フレイル健診」を開始したように、後期高齢者では栄養過多によるメタボリック症候群よりも、栄養不足と関係の深いフレイル(老衰)が、生活の質を下げたり、要介護状態の原因として重要になり、臨床栄養学においても大きなパラダイムシフトが世界に先駆けて起こりつつあります。

私たちは現在、複数の高齢者施設のご協力を頂き、便秘だけでなく栄養状態やフレイル(老衰)と腸内細菌叢の関係に注目し、次世代シークエンサーやバイオインフォマティックスなど最新の手法を利用して研究を進めています。最終的には、簡便な採便検査を用いて、低栄養、認知症、心臓病など将来陥りやすい合併症を予測することを目指しています。

一方、重度の知的障害と重度の肢体不自由を合わせ持ち、常時医療的ケアが必要な重度心身障害児・者を含む在宅療養児でも、低栄養や便秘をはじめとして、要介護高齢者と類似した課題を抱えています。

さらに、インドネシアハサヌディン大学医学部との共同研究により、サゴというヤシの木の一種の幹から採れる澱粉を主食とするニューギニア島先住民の低蛋白質食適応機構についても研究を進めています。彼らは極めて少量の蛋白質しか摂取しないにもかかわらず、健康で筋肉質の身体を持ちます。彼らの低蛋白質食適応機構を解明することで、後期高齢者や在宅療養児の低栄養状態を予防・改善する一助となることを目指しています。

ニューギニア島先住民の体型の一例


【左】サゴデンプン 【右】サゴデンプンの料理写真(料理名:Sinole)

 

受験生・在学生にひとこと

現在、間違いなく日本が世界最先端を走っているもの、それは高齢化です。世界に先駆けて高齢化の進行に伴うパラダイムシフトに立ち会えることは、若い世代が将来を設計する上でも大きなチャンスだと思います。過栄養対策から低栄養対策へ、そしてその流れを日本から世界へ、そのカギは栄養学にありますよ。

私たちの研究室では、次世代シークエンサーやバイオインフォマティクスといった最新の技術も取り入れつつ、上記のような課題意識に立ち、今後数十年にわたって社会から求められるような人材を育てたいと考えています。興味を持った方は、在校生、受験生、大学院受験希望者問わず、いつでも歓迎いたします。

企業・ 各種公益法人 の方へ

当研究室の研究テーマにご興味をお持ちの方は、共同研究なども歓迎いたします。既に複数の企業とご一緒させて頂いております。また、高齢者施設など医療・介護施設で研究への参加にご興味がある方、当研究室の研究に協賛いただける方も歓迎いたします。

研究者の方へ

研究の概要

【これまでの研究活動】

当研究室の入江は臨床医として、後期高齢者の在宅医療や介護療養病棟での診療に携わり、後期高齢者における腸内環境の乱れや蛋白質エネルギー低栄養の問題に取り組んできました。また、岡山県立大学で4-6週間の習慣的甘酒摂取が女子大学生および地域の前期高齢者の便秘を改善し、その際ビフィズス菌増加など腸内細菌叢の変化を伴うことを見出しました。(2020年:中高年者における米麹甘酒摂取に伴う腸内環境と排便の変化 日本臨床栄養学会雑誌, vol.42, no.1, pp.54-65, 2020)。また、一般の中高年における中等度の運動習慣が腸内環境や腸内細菌叢構成に影響することを見出しました。(2019年度:日本スポーツ栄養学会第6回大会、2018年度:日本スポーツ栄養学会第5 回大会で発表、現在論文投稿中)

この過程で、便秘評価尺度( Constipation Assessment Scale)をはじめとする腸内環境の評価法、糞便中の微生物由来DNAを用いて腸内細菌叢を定量的に解析する方法(当初は定量PCRを使用)を導入、運用して解析を行ってきました。さらに2019年より、介護療養病棟入院中患者、高齢者施設入所者、在宅の重度心身障害児者を対象に甘酒介入と腸内細菌叢の解析を行い、この段階から国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所との共同研究で、次世代シークエンサーおよびバイオインフォマティクスによる解析に移行し、より詳細で立体的な腸内細菌叢の姿を明らかにするとともに、栄養状態やフレイルの症状などとの関連についても解析を進めています。(Effects of Malted Rice Amazake on Constipation Symptoms and Gut Microbiota in Children and Adults with Severe Motor and Intellectual Disabilities: A Pilot Study, Nutrients, 13(12), 4466, 2021、重症心身障害児(者)を含む在宅療養障害児(者)における6週間の米麹甘酒摂取に伴う便秘症状の変化, 小児保健研究,vol.81, No.1, pp.34-44, 2022)

岡山県立大学は、インドネシア国立ハサヌディン大学と学術交流協定を締結しており、これに基づいて昨年度より当研究室に博士課程の大学院生(医師)を受け入れています。受け入れに当たってハサヌディン大学医学部のNurpudji Astuti Taslim教授と本研究について共同研究を行うこととなり、2019年9月には両大学の研究チームがパプア州に入り、調査および試料採取を行いました。

【共同研究について】

当研究室の研究テーマにご興味をお持ちの方は、共同研究なども歓迎いたします。既に複数の企業とご一緒させて頂いております。