保健福祉学部栄養学科Department of
Nutritional
Science

食品化学研究室

教員紹介

氏名・職位    伊東 秀之 ITO, Hideyuki 教授


【専門分野】

食品化学、天然物化学

【所属学会など】

日本薬学会、日本農芸化学会、日本生薬学会、日本栄養・食糧学会、日本食品化学学会、日本フードファクター学会、おかやまバイオアクティブ研究会

主な研究テーマ

研究室メンバー

〈天然有機化合物の新規機能の開拓〉

  1. 食品成分の分析方法の開発
  2. 天然有機化合物の単離と化学構造研究
  3. 機能性ポリフェノール成分の生体利用性に関する研究
  4. プレバイオティクス様作用を有する天然物の探索
  5. 糖化作用を有する天然物の探索

一般の方へ

こんな研究をしています

人類は古来、病気になった時や怪我をした時に、その治療薬を植物などの自然界から求めて、長い経験や伝承を積み重ねて、民間薬や漢方薬として利用してきました。現在医療の現場で使用されている医薬品の半数以上は、自然界から得られた有機化合物(天然有機化合物)そのものや、それをシーズ(種)にして化学合成されたものです。しかしながら自然界には、未だ十分に研究されていない天然素材が数多く存在しているのが現状で、いわば自然界は医薬品の宝庫と言っても過言ではありません。天然有機化合物と一言でいってもいろんなタイプの化合物の種類がありますが、そのなかでも私たちは特にポリフェノールと呼ばれる化合物群を対象とした研究を行っています。薬用植物や食品素材から様々なポリフェノールを取り出し、いろんな種類の分析データや化学反応の結果から得られるデータなどを基にして、それらの化学構造を解明します。化学構造を明らかにした化合物がどのような有益な作用を示すか、動物細胞や実験動物を用いて試験し、機能性成分を探します。さらに、新たに発見した機能性を持つ天然有機化合物は、実際に摂取すると体の中でどのような形の化合物となって、機能性を発揮しているかを検証し、機能性天然有機化合物の活性本体の探求も行っています。

最近になって、私たちはザクロの可食部から意外にも今まで全く知られていなかった成分を発見し、それら関連の成分が腸内細菌の善玉菌を元気づける作用や抗老化(アンチエイジング)作用などのユニークな機能性を持つことを食品メーカーとの共同研究によって見出しました。発見した機能性成分は、市販のジュースやワインにも含まれていることがわかり、それらの研究成果は健康雑誌にも取り上げていただきました。

受験生・在学生にひとこと

私たちは生きて行く上で欠かせない食を化学的な切り口から捉えながら、身近な食品素材や未利用資源から医薬品のシーズとなる成分や機能性食品の素材となり得る自然界の宝物を探求しています。ヒトの健康維持・増進や各種疾病の予防や治療に役立つことを目指し、食を通じた社会で先導的に活躍できる広い視野を持った人材を養成しています。

研究者の方へ

研究の概要

近年、薬用植物や食品に含まれる多種多様なポリフェノールの化学構造が解明され、それに伴って、天然ポリフェノールの多彩な機能性も明らかになってきています。しかしながら、機能性天然ポリフェノールは、実際に生体内においてどのような挙動を示し、どのような物質となって機能を発揮しているのか、即ち機能性に応答した天然ポリフェノールのバイオマーカーについての知見は、ほとんど解明されていないのが現状です。そこで、我々の生活に身近なポリフェノールについて、生体内代謝プロファイルを考慮し、バイオプレカーサーとしての天然ポリフェノールの探索研究を進め、天然素材から各種疾病の治療や予防に寄与する医薬品のシーズや機能性食品素材の探索を行っています。

研究成果例 など

最近の研究成果1

私たちは、機能性ポリフェノールをはじめとする有用天然物の生体内代謝産物の化学構造を明らかにし、それらの機能性についても明らかにしてきています。特にコーヒーなど身近な食品素材に含まれるクロロゲン酸の生体内代謝物の一つであるメタクマル酸が海馬神経細胞突起伸展作用を有すること、クランベリーポリフェノールの尿中代謝物が大腸菌バイオフィルム形成抑制活性を有すること、またザクロやベリーなどに含まれるエラジタンニンの生体内代謝物のurolithin Aが抗炎症作用や抗炎症作用を有することなど、天然ポリフェノール成分が生体内で代謝されて機能性を発揮するものの存在をいくつか見出しています。

最近の研究成果2

ザクロの機能性については特に欧米で盛んに研究が行われていますが、そのほとんどがザクロ果皮に多く含まれているエラジタンニンのpunicalaginやellagic acidの作用に帰せられています。最近、私たちは、ザクロにエラジタンニンオリゴマーが含まれていることを初めて見出し、さらにアリル(可食部)から新規エラジタンニンオリゴマーを単離し、化学構造を明らかにしました。また、それらエラジタンニンオリゴマーには抗糖化作用などを有することも明らかにしました。