保健福祉学部看護学科Department of
Nursing
Science

看護学科 研究紹介

教員紹介

氏名・職位    荻野 哲也 OGINO, Tetsuya 教授


【専門分野】

生命科学 病理学 基礎看護学

【所属学会など】

日本病理学会、日本臨床細胞学会、日本酸化ストレス学会、日本看護技術学会他

主な研究テーマ

  • 看護実践における生体応答
  • 酸化ストレスと情報伝達制御
  • 臨床病理

こんな研究をしています

体位変換、罨法、静脈穿刺などの様々な看護実践に伴い、生体には圧力や温度変化などの負荷がかかり、生体はこれに反応して局所および全身に様々な変化が生じる可能性があります。研究室では生体への負荷とそれに伴う細胞・組織・個体の応答について物理化学的な計測を通して評価し、自律神経活動や循環動態の変化などを明らかにし、より良い看護実践を探究しています。
私たちの行っている研究は、現場で医療を提供している医師、看護師、臨床検査技師などの方々に信頼のおける、新たな情報を提供することが大きな目的です。それによって、一般の皆さんの疾病予防や健康の維持増進に貢献できると考えています。

受験生・在学生にひとこと

私たちの研究の基盤には、解剖生理学や病理学があります。解剖生理学は正常な人体の構造と機能を探究する学問で、病理学は、病気の原因、経過及び結果をさまざまな方法で追求することによって、病気の本態を究明する学問です。これらの学問は医療や看護を実践するにあたり、基礎的かつ重要な分野です。研究はこれらの基盤の上に新しい知見を一つ一つ積み重ねていくような作業です。

研究者の方へ

最近の研究成果1
冷罨法は、疼痛緩和、発熱時の快適性、時には全身冷却を期待して医療現場で頻繁に使用されています。本研究では、氷嚢の熱エネルギー伝達能力を定量的に評価し、冷却効果を検証しました。20歳代の健康な成人48名を被検者とし、乾いたタオルを2重に巻いた氷嚢を用いて額、頸あるいは掌を10分間冷却し、冷却時と非冷却時の皮膚表面温度、熱流、核心温度を測定し、熱流を時間で積分することでエネルギー移動を算出しました。その結果、氷嚢によって奪われるエネルギーは非冷却時と比べ10分間で約150~180kJ・m-2増加しました。この量は氷嚢と接触する皮膚表面積が小さいため、急速な全身冷却には不十分でした。つまり少数の氷嚢を局所的に用いても、核心温度を下げるほどの熱エネルギーは吸収できないことが明らかとなりました。
Ichikawa Y, Ogino T. Acta Med Okayama (2024) 78(1):53-61

最近の研究成果2
骨粗鬆症は骨折するまでは比較的無症状で、早期発見が課題です。骨粗鬆症の評価は二重X線吸収測定や定量的超音波検査が標準的ですが、どこにでもある機械ではなく、より簡便な骨密度推定法が望まれます。骨組織は他の組織よりも比熱が低いことが報告されていることから、組織の熱特性の違いを利用して骨密度を推定することが可能かどうかを検討しました。68名の健康なボランティアの脛骨内側面を氷嚢で冷却し、皮膚表面温度と熱流を測定しました。これを用いて、単位温度変化あたりの熱エネルギー移動量を算出し、この値と、定量的超音波検査で推定した骨密度との関連を検討しました。結果、単位温度変化あたりの熱エネルギー移動量は、骨密度と有意な負の相関を示し、重回帰分析では年齢、身長とともに、骨密度の有意な予測因子でした。
Tanaka A, Ogino T. Clin Anat (2024) in press