2022年5月24日一般情報情報工学部

野田祐輔准教授(情報通信工学科)が参加した共同研究が「ACS Central Science誌」に掲載されました

酸素が反応に寄与するニッケル系電池材料
高エネルギー密度リチウム電池実現に期待

新規不規則岩塩型ニッケル系材料開発と次世代蓄電池への応用

横浜国立大学/名古屋工業大学/岡山県立大学/京都大学/立命館大学

本研究のポイント
・従来材料とは異なり酸素が反応に寄与する新しいニッケル系材料の発見
・酸素を利用する高効率・高電圧な新しい電池反応の立証
・次世代の高エネルギー密度電池材料開発の実現に繋がる研究成果

【研究概要】
 横浜国立大学の藪内教授と名古屋工業大学の中山教授らの研究グループは、不規則岩塩型ニッケル系材料を開発し、実験的・理論的に反応機構の解析を行いました。その結果、本材料が、従来材料とは異なり、酸素が反応に寄与するにも関わらず高効率・高電圧を示すことを世界で初めて立証しました。従来とは異なる観点からの高エネルギー密度なリチウムイオン電池用材料の開発、及び、リチウムイオン電池のさらなる高性能化に繋がることが期待できる成果です。
 本研究成果は、米国化学会の科学雑誌 「ACS Central Science誌」に2022年5月23日(日本時間)にオンラインで掲載されます。

【研究成果】
 リチウムイオン蓄電池の市場が急拡大しており、電池のさらなる高エネルギー密度化を目指して、リチウム過剰型マンガン系層状材料の研究開発が行われている。これらの材料では酸素の酸化還元反応を利用することで高容量が得られるが、充放電時のエネルギー効率が悪く、作動電圧がやや低い、という課題が存在している。また、このような酸素の反応を安定化させるためにはマンガンの存在が必要であった。本研究では従来の層状材料とは異なる、リチウムとニッケルが不規則配列した岩塩型構造の酸化物材料の開発に取り組み、その結果、優れた充放電効率とマンガン系材料よりも高い電圧で動作させることに成功した。また、実験的・理論的に詳細に解析を行い、リチウム過剰型マンガン系層状材料と同様に、酸素による酸化還元反応が進行することが確認された。さらに、不規則岩塩構造では、直線的にNi-O-Ni結合を形成することで特異的に反応が活性化・安定化し、高効率化と高電圧化を実現可能であることを世界で初めて明らかにした。今後、さらに材料開発が進めば、実用的な高エネルギー密度電池の実現に繋がる研究成果である。本研究は横浜国立大学、名古屋工業大学、岡山県立大学、京都大学、豪州ニューサウスウェールズ大学、韓国科学技術院、BASFジャパン株式会社、立命館大学の共同研究成果である。

【実験手法】
 ニッケル系岩塩型酸化物 LiNi2/3Nb1/3O2はLi2CO3, Ni(OH)2, Nb2O5を原料に用い固相反応により合成を行った。充放電時の試料の電子状態の変化は高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリー、同J-PARC、立命館大学 SRセンター、豪州Australian Synchrotronにて測定を行った。

【社会的な背景】
 世界的に脱炭素社会実現への動きが加速している。そのためには、太陽光や風力といった自然エネルギーの活用と電気自動車の高性能化が不可欠であり、より高性能な正極材料の開発が求められている。従来の遷移金属イオンではなく、酸素を利用する新しい電池材料はエネルギー密度の向上が期待できるため、世界中で熾烈な開発競争が行われている。

【今後の展開】
 今回、酸素を利用する高効率・高電圧な不規則岩塩型ニッケル系材料を発見し、新しい電池反応の基礎理論を確立した。この基礎理論の応用により、今後、高エネルギー密度岩塩材料の開発、及び、次世代リチウムイオン蓄電池の実現が期待できる。

計算結果

 

用語解説
リチウム過剰型層状材料従来の材料と比較して、構造中に過剰のリチウムを固体中に含有する材料。次世代の高容量正極 材料として活発な研究開発が行われている。
不規則配列岩塩型構造従来の材料は岩塩型構造でもリチウムと遷移金属イオンが規則的に配列した層状構造であるのに対し、リチウムと遷移金属イオンが不規則に配列した構造を有する。この不規則構造では直線的にNi-O-Ni 結合が形成するという特徴を有する。

【研究に関するお問い合わせ先】
 横浜国立大学 工学研究院
 教授 藪内直明
 TEL: 045-339-4198
 Email: yabuuchi-naoaki-pw●ynu.ac.jp(●を@に変更)

【本学担当】
 情報工学部 情報通信工学科 准教授 野田 祐輔
【担当した研究内容】
 量子力学に基づく原子スケールの理論計算(第一原理計算)を用いた不規則岩塩構造の電子状態解析を担当。遺伝的アルゴリズムを用いて最適な原子配列をもつ不規則岩塩構造モデルを作成し、不規則岩塩構造中の直線的なNi−O−Ni結合が電池反応に寄与することを明らかにしました。上記の理論計算は、野田准教授が国立研究開発法人物質・材料研究機構 情報統合型物質・材料研究拠点 蓄電池材料グループ ポスドク研究員当時に、蓄電池材料グループリーダーを兼任した名古屋工業大学 大学院工学研究科 中山将伸教授および中山研究室(化学電池材料研究室)の学生と共に行ったものです。

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