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向山 徹教授の建築作品「岩国のアトリエ」が雑誌『新建築』2020年4月号 で紹介されました

向山 徹教授の建築作品「岩国のアトリエ」が雑誌『新建築』2020年4月号 で、10ページに渡り紹介されています。今回は木造特集で、都市に建てられる大規模な木造から、住宅スケールのものまで幅広く紹介されています。木構造のデザイン・架構技術も詳細に表現され、見ごたえのある内容になっています。
書影 書籍紹介 
  • 『新建築』
  • 1925年8月創刊された日本の現代建築をクオリティの高い写真や図面等で詳細に紹介している日本を代表する建築専門誌。
  • 日本語/221x297mm/A4変型/平綴じ
  • 発行元 :新建築社
  • ISSN:13425447
掲載作品「岩国のアトリエ」(建築作品)
 画像_岩国のアトリエ

土と木組みによる密実な構造体 (本誌掲載文より。)
  •  岩国市の郊外、瀬戸内海に面する小高い丘陵地の集落に、書と絵画の収蔵庫を含む画家のアトリエと展示ギャラリー、住居を計画したものである。敷地の周辺は、古い瓦屋根の家や板壁・土壁の家がまだ残る集落であった。画家である建て主は、自分が住むあるいは過ごす空間は可能な限り土や木などの天然素材によるものでありたいと願い、大工は土と木組による建築を信念として造り続けていた。この人々の想いや周囲の環境から、「伝統工法を基本とした新たな木の架構と土壁による密実な構造体」を前提に計画を進めることとなった。アトリエ棟は、西側に開けた道路側に低いたたずまいで建ち、住居棟は東の森に寄り添うような高さで建つ。二つの棟の間は、南北に細長い庭となり、将来的には彫刻などの野外展示も想定された逍遥的な空間となっている。
  •  アトリエ棟は、内外ともに中塗りの土壁仕上げとし、低く抑えられた深い軒によって雨がかりを防いでいる。屋根架構は、二本の合わせ垂木による登り垂木で板状の水平材をはさみ、雇いを介して込栓で止め、梁間方向の開き止めとしている。この架構により、長手方向の見通しや、棟瓦両側のガラス瓦によって内部へと導かれる天空光を遮らない空間となった。
  •  建て主である画家の絵は、「ただ、そこにある」(画家)という言葉から導かれて、絵具という素材がキャンバスの四方の縁まで乗せられ、わずかな隙間を開けて木枠に嵌めこまれている。厚みを持った絵具の塊にも見える。その塊を受ける壁にはやはり厚みを持った質感が求められた。質感を現すのは、人の手によって丹念に塗り重ねられた土と厚みを現わすディテール、その上に注がれる天空の光である。木と土によって築かれた構造体が、絵の背景となり、かつ絵と一体化する。
  •  住居棟は、隣接する森からの湿度と雨がかりを考慮し、外壁は濃い茶褐色で塗装した杉板とし、内部はギャラリー棟同様、土壁の中塗り仕上とした。台所や階段、トイレ、2階の書斎を内包する中央コアの耐震壁と、長方形平面のそれぞれの辺の外側にそれぞれ二枚づつ設置された耐震壁としての隔壁により、一室空間としての開放性と回遊性が得られている。1階の茶の間は地盤より400mm床を彫り込み、北庭との親密な関係と大地と住まいの一体感を深層で支える空間とした。
  •  両棟とも、深い軒が受ける風の吹上に対するため、垂木と桁の間に人形束という雇い材を埋め込み、込み栓で両方の材を緊結している。金物ではなく、あくまでも木と木を噛み合わせて架構体をつくるという大工の強い信念によるものである。手の込んだ継ぎ手であるが、非常に合理的な工法でもあり、密実な構造体として見えないところで建築の存在を支えている。
  • アトリエ棟の石敷きテラスに立つと、西に開けた集落と東の静かな森の空間の間を緩やかにつなぐ力を感じる。そこに創造のためのアトリエとギャラリー空間が直行し。強い創造へのエネルギーを感じられるようにも思う。これからの気候変動にも揺るがず、周囲の自然や環境と共に、豊かな生活と創造の場が育まれてゆくことを願っている。                

 写真
<お問い合わせ> 
 岡山県立大学デザイン学部デザイン工学科
 教授 向山 徹

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